個々のタンパク質を撮影した初めての画像

個々のタンパク質を撮影した初めての画像

人体には何千種類ものタンパク質があり、それぞれが独自の形状を持ち、その機能を決定します。しかし、科学者が個々のタンパク質の画像を撮影するのは困難です。高性能の画像ツールでは壊れやすいタンパク質は見えなくなってしまうからです。そのため研究者は結晶構造にあるタンパク質の写真を撮影します。一度に何百万個ものタンパク質を撮影することもあります。その結果得られる画像はぼやけていることが多く、結晶を形成できないタンパク質もあります。最近arXivで発表され、New Scientistで報告された研究によると、現在、あるチームが驚異の素材であるグラフェンを使用して、個々のタンパク質の写真を初めて撮影しました。

単一のタンパク質の画像を撮影するために、研究者らは溶液中のタンパク質混合物をグラフェンの薄いシートに吹き付けた。次に、低エネルギー ホログラフィー電子顕微鏡を使用した。これは、タンパク質に電子ビームを反射させて画像を作成し、それらの電子が他の電子のパターンとどのように相互作用するかを記録するものである。この低エネルギーにより、研究者らが写真を撮影している間にタンパク質が消滅することがなかった。研究者らはコンピューターを使用して、ホログラム画像からタンパク質の元の構造を再構築した。

研究者たちは、構造がよく知られているいくつかのタンパク質、すなわちヘモグロビン(赤血球内で酸素を運ぶタンパク質)、ウシ血清アルブミン(実験室でよく使われる牛のタンパク質)、シトクロム c(体内で電子を移動させるのに使われるタンパク質)でこの画像化技術を試した。得られた画像を他の画像化技術で撮影したものと比較したところ、写真のぼやけが少ないことがわかった。研究者たちは次に、これまで単独では見たことのないタンパク質の写真を撮影したいと考えている。科学者がタンパク質の構造をより深く理解すれば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病など、タンパク質の折り畳み異常に関連する疾患で何が問題なのかを解明できるかもしれない。

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